緒方の手に当たりがあった。
「あった!」
緒方は、スコップを置くと指で土を掘りだした。
中から不気味な色合いの物が現れた。
骨だ!頭蓋骨を緒方は、持ち上げた。そのひだりがわに陥没があった。
ゆかりは、緒方を見た。
「やっぱりな」
緒方は、そういうと遠くを見つめた
「老夫婦の死体なのね?」
「まちがいない」
「じゃあ、あの旅館の夫婦は何者なの?たけし君もおかしいっていうの?」
ゆかりは、悲痛な声を出した。
緒方は、ゆかりを見ると、
「ひょっとしたら、貴方は、病気ではないかもしれない。今いえることは、一人で旅館に戻らない方がいいってことだ」
緒方の車で、旅館に向かっていた。とりあえず、緒方が一緒に来てくれることになった。
緒方も旅館で確かめたいことがあるという。直接、その夫婦に会いたいというのだ。
ゆかりは、少し安心した。一人では、あの旅館に戻れない。あの死体を見たばかりなのだ。
ゆかりは、窓の外を流れていく針葉樹の林をボーっと眺めていた。
「!?」
その時だった。ゆかりは、窓ガラスに顔を押しつけた。
高い木のてっぺんに何かがいたのだ。走ってる車からだったから、はっきりとは見えなかった。
ほんの一瞬、ゆかりの目にうつったもの。触手を四方八方に伸ばした巨大な蜘蛛のようなシルエットが、木の枝と枝の間にへばりついてるように見えたのだ。